大島蛤診療所跡
撮影機材:Nikon FM2 with 50mm 1:1.8 / T-MAX400
こんな写真撮って恐くなかったん? と、よく聞かれる。何かが出てきそうで気味が悪いという意味である。うんにゃ、全然恐くなかったよ。と、答えるようにしているが、ホントは恐い(笑)。ただ、オバケがというよりニンゲンに対する恐怖なのだが...。
まずは、不法侵入であること。見つかれば、ひょっとするとお縄ちょうだいである。潜伏中は物音たてないように、外から自分の姿が見えないように、細心の注意を要する。また、先客がいたらマズい。雨風が凌げ、人の寄り付かない場所である。そういう場所を求めて世捨て人がいないとも限らない。ばったり出会えば、お互いパニックに陥るかもしれない。そして何より、実は殺人現場であり死体が転がっていたなんてことがあったらたまらない。そういう意味で恐いのである。
この写真の現場を見たとき、感動のあまり足が振えた。全身に鳥肌が立ち、ゾクゾクして思わずニヤけてしまったのを覚えている。とにかく美しかった。柔らかな西日を浴びた藁の1本1本が光り輝いていたのである。薄暗い病室の中で。
あぁもう一度あの空気の中に浸ってみたい。そう思うが、今となっては叶わぬ夢である。その、切なさというか寂しさというか、それが廃墟探訪の醍醐味なのかもしれない。