SX-70というカメラはまるでびっくり箱である。まず、90%の確率で裏切ってくれる。悪い意味である。写真の現像には厳密な温度管理が必要なことは周知のこと。SX-70というカメラは、外気に触れた状態で現像のプロセスに突入する。従って、気温によってカラーバランスが大きく崩れるのである。
青みがかっているという人もいれば赤っぽいと口にする人もいるが、要するに、どんな色合いに仕上がるかは、現像が終わってからのお楽しみってわけだ。それはそれで楽しみでもあるのだが、ワクワクしながら現像を待ち、浮かび上がった像を見て、たいていの場合はがっくりする。たいていとは、前述の通り90%の確率である。10枚入り2000円弱のフィルムを装填し、9枚はろくでもない写真が誕生するという、何とも贅沢なカメラなのである。
しかしながら、10%の確率でドキリとするほど素晴らしい写真が生まれるという、秘めたパワーの持ち主でもある。何がどううまく働いたのかは判らないが、とにかく、普通のフィルムカメラじゃ絶対に出すことができない色が出てしまうのである。この写真がまさにそう。浮かび上がった像を見て、とにかくびっくりしてしまった。
SX-70の、ボクなりのコツは、被写体にできるだけ寄って撮影するというものである。非常にボケが美しく、背景のにじみ具合が素晴らしいので、最短撮影距離で撮ると、たいていバックがいい具合にボケてくれる。そんな感じで、あとは神頼みというわけである。何とも楽しいカメラである。