尾股小中学校跡

撮影機材:Nikon FM2 with 50mm 1:1.8 / T-MAX400
尾股小中学校跡

 昔、「カリベタ」というコトバを紹介したことがある。ボクの造語なのだが、「コントラストが高く乾燥ぎみ(カリカリ)であり、尚かつ真っ黒く潰れている空間(ベタベタ)を持つモノクロ写真」を形容する言葉である。「カリ」からエッチなことを想像した人もいるかもしれない。残念でした。

 モノクロ写真を撮るようになった10年ほど前、様々な写真集やサイトを見て、モノクロの持つ力強さはこの「カリベタ」だなぁとつくづく思い、それ以来、絞り込んで撮影することが多くなった。が、気を抜くと開放で撮ってしまう自分がいる。何を隠そう、ボケが非常に好きなのである。

 最近は、カラーの世界でも絞り込んでカリカリになった風景写真を多く見かけるようになった。それはそれで美しいんだが、ボクはやっぱりこんな感じでボケが効いた写真が好きだなぁ。ピンをはずすことも多々あるんだけどね(笑)。この写真は、勿論、光量が足りなかったということもあるが、周辺光量の低下でスポットライトが当たっているかのような雰囲気にならないかなぁと、開放で尚かつマイナス補正で撮ったものだ。思惑通りに仕上がった、なかなか満足のいく1枚である。

 壁に残されたフック。それが美しかったわけでも、珍しかったわけでも何でもない。ただ、こんな雰囲気を出したかっただけである。わざわざ山奥の尾股小中学校跡に行かなくても何処でも撮れそうな写真であり、尾股らしさなんて全くない。事実、この壁はパステルブルーに塗られており、カラーで撮った写真の方が尾股らしい雰囲気を醸し出している。モノクロで表現することはナンセンスであるのかもしれない。でも、わざわざ尾股まで行き、尾股の空気に接したからこそ、そういう写真を撮ってみようという気になったんだろう。そう思うようにしている。