この1枚を撮るためだけに、先日、機関庫跡を再訪した。7度目の訪問である。記念すべき瞬間である。忘れないようにメモっておこう。2007年6月3日(日)の夕刻である。
豊後森機関庫跡を上空から眺めると弧を描いた形をしている。その中心にターンテーブルがあり、その延長線上に日が沈む。夕刻に訪れると、機関庫内は西日を受けほんのり朱に染まる。その瞬間がとても好きだ。ひんやりした地面にしゃがみ込み、西日に背を向け、壁の陰陽をぼんやりと眺める。自分がニンゲンであることを忘れる瞬間である。
フィルムカメラをメインとして使う自分としては、撮影時にテンションがぐいぐい上がり、そのテンションを持続させたまま帰り、現像の上がったフィルムを取りに行く瞬間がピークに達し、フィルムを見た瞬間、奈落の底に落ちる。毎度毎度、この繰り返しである。現地で見た感動、現地で感じた空気、それがフィルムに映っていないからである。そうして、次こそはと再訪を決意する。
デジカメが普及し、フィルムというものは過去の産物となってしまった。カメラと言えばケータイを思い浮かべる人が増えた。フィルムなんてあと何年残るものなのか分からない。確かにデジカメの方が効率的であり、現地でコマを確認しながら、微調整しながら、納得のいく写真を追求することができる。ボクも持っている。失敗の許されない時はデジカメに頼る。ノートパソコンも持参し、現地でパソコンに読み込ませ、拡大して確認しながら撮影する。が、デジカメはヘコまないのである。何もかも現地で終了してしまう撮影。じっくりと考える必要のないシャッターチャンスや構図。家に帰り頭を冷やし、次回撮影のイメトレをする必要がないというのは、考えようによっては恐ろしいことである。構えているだけ。シャッターを押しているだけ。何だか、撮影が単純作業のように思える。
何はともあれ、7度目の正直である。6年越しに、ようやく納得のいく1枚を収めることができた。この喜びは大きい。